演 者 演目名:多摩川


九代目 芳村 伊四郎
 江戸の水道の源、多摩川の清流を奥多摩から府中の大国魂神社の六所祭りを読み込み、下流の和泉多摩川砧あたりまでの様子を、明治四十一年(1908)九月、新橋演芸会に大薩摩節の新曲として発表された。こうした曲は一度限りのものが多いのだが、作曲の面白さから流行した。作詞は永井素岳、作曲は五代目杵屋勘五郎。大薩摩節は江戸浄瑠璃の一派で大薩摩主膳太夫が享保期(1716〜1736)に始めたもので、節調が荒事に適していたので歌舞伎に出ていたが、中絶していたのを文政十二年(1791)に十代目杵屋六左衛門が大薩摩の名義を預かることで、長唄に吸収された。今日の歌舞伎では、豪快な場面などの前奏曲として大薩摩が使われている。
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